So-net無料ブログ作成
検索選択

走る男 [雑文]

通勤の風景”キャラが立った人々” (2)走る男

朝方、自宅を出て、最寄りの駅の階段を上る。いつもの電車に間に合う様に、時計を見ながら足早にタンタンと階段を上る、、、と、いたいた、いつもの”走る男”だ。50代の男性で、背は低く、痩せこけていて、首などはまるでこけしのようだ。頭は典型的な”バーコード”スタイルで決めている。四角い眼鏡を神経質に鼻の上に乗せている。唇は薄く、あくまでも固く結ばれており、他人との会話を拒むかのようだ。いつものように黄土色のウインドブレーカー。いつものように茶色っぽいスラックス。この人はいったい何着、同じような服を持っているのだろう。洗濯が嫌いなのか?この出で立ちで、走りやすいスニーカーを履いていて、さらにいつも若者向きのバックパックを背負っている。(最近の若者に、バックパックといって理解していただけるかどうか不安)

彼はいつもの場所にいつもの時間にいつものような姿勢で立っている。ふわふわと体を動かして落ち着かない。電車を無表情で待つ、待つ、待っている。後ろに並ぶ人たちには無頓着だが、隣に立って待とうとすると、途端に不愉快そうな表情をする。あまり近くに立つと、何となくこちらに体を預けるような形で体重をかけ、こちらを押しのけようとする。しかし近づきさえしなければ、実害はない。

さて、ガタゴトと電車がホームに入ってきた。電車と”走る男”との距離は限りなくゼロに近い。ホームぎりぎりで電車を待つ。この人は恐怖という感情をもたないのだろうか?無表情で、通り過ぎる電車の風圧で”髪”を乱しながら、電車が止まるのを待つ。止まった0.3秒後には、一心不乱に電車に走り込む。定位置につく。たいてい席は空いていない。必ず優先席の前に立つ。荷物を棚の上に乗せる。前日の行動をコピーしたかのようだ(私も毎日彼と同じ時刻の電車に乗っているわけだが)。まるでロボットのようだ。”走る男”をちらちらと観察していると、空いている席を探している。数十秒おきにきょろきょろとあたりを眺めている。しかし空席が無いので、あきらめたようだ。無表情で、たまに吊り輪にぶら下がったりしながら電車に揺られてゆく、、、。

連絡駅のひとつ前の駅で、彼は一旦電車を降りる。それから、、、列車の後方に向かってホーム上を鋭いダッシュだ。すいている車両をめがけて一気に走り、扉がしまる直前に、、、周囲に目を配って、、、全ての乗客が乗り込んだことを確認してから、、、ゆっくりと電車に乗り込む。そして扉のまん前に立つ。これで連絡駅ですぐに電車を降りて、有利に走る準備が整うわけだ、、、なるほど。たまたま、同じ扉の前に、並んで立ってしまったことがある。狭い扉の前に私と彼。彼はそっと体を寄せてきて、それから私に全身の体重を預けて押しのけようとした!恐れていたことが起きたわけだ。彼はおそらく、乗り換えに有利な扉の前の空間を独占したいのだろう。次の駅までの僅かな時間、彼は私に体重をあずけ続け、腰痛持ちの私は冷や汗をかいた、、、、電車が駅について扉が開いた刹那、言うまでも無いことだが、彼は誰よりも早く開いた扉から解き放たれて、次の電車の席の確保に向かった、、、、。私は腰痛のため走ることができず、完全な敗北だ。それからは、電車で彼を見かけると、できるだけ距離を保つよう心がけている。

電車に乗ると、彼は満足したように確保した席に身を沈める。そして、せかせかと荷物など調べ始める。電車に二駅乗る。すると彼はすっくと立ち上がり、(この人は二駅乗るためにあんなにがんばったのか?)バックパックをしょって早足で社内を走り出す。かなりのスピードで、しかも周囲の人に注意を払わないので、ガッツンガッツン人の背や足にぶつかりながらだ。いったいこの人は何を考えているのだろう、、、。アグレッシブな動きを暫く見せた後、彼は怒ったような表情を浮かべながら、いつもの駅で、いつもと同じ扉から電車を下りる、、、もちろん走って下りるのだ。

あんなにがんばって、あんなに周囲の人に顰蹙をかって、たった二駅のために椅子を確保するなんて、、ここに書いて多少は気が晴れたけれど、機会があったらこの人の頭の中をのぞいてみたい!
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この記事のトラックバックURL: